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ジル・ボルト・テイラー博士の『奇跡の脳』 [高次脳_役立つ情報]

知っている方も多いと思いますが、インディアナ医科大学の神経解剖学者 Jill Bolte Taylor(ジル・ボルト テイラー)博士の『奇跡の脳』 。今月末に文庫本が発売されます。僕もすでに予約しました。

タイム誌の「2008年世界で最も影響力のある100人」にも選ばれた世界的に尊敬されている方です。
彼女は、37歳の時に脳梗塞を発症し、左脳がほとんど失われた状態から、8年間を経て社会復帰しました。
実は本はまだ読んでないのですが、NHKの番組を恩師がわざわざDVDに落としていただき、それを見て知りました。病気は違えども、僕も同じ37歳での発症だったので、そこから8年かけて復帰された博士を尊敬してます。

このパワフルな博士の講演の様子、ぜひご覧ください(字幕あり)。


実は病後に、中村桂子さん(NHKの“奇跡の脳”で博士の聞き手をされていた生命科学者)の講演を聞いたことがあるのですが、その時に「ジルはすごい。自分の存在意義を病気をきっかけに180度変えて、人間の世界にとけこんでいる。」みたいなことを言っていたのを覚えてます。受傷の程度は異なるのですが、8年かけてここまで力強く語りきれるジル氏は、脳障害を得た当事者からすると一つの憧れ的存在です。
僕はまだ3.5年。ジルの力強いスピーチを見ていると、障害を得ても生きていく希望と勇気が持てます。

↓NHKで紹介されていた博士が作ったステンドグラス。病前作成していたものより明らかに色使いやコントラストが派手になったとのことです。僕も全く同じで、なぜだか派手な色が好きになってしまいました。不思議ですね。
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新しい自分創りを共創する [高次脳_社会復帰の戦略]

生活基盤の崩壊と自己認識の欠損が引き起こす、混乱と不安

あたりまえだった日常を支える、普段あまり気付かない「健康」という人間一番の生活基盤。
ある日突然、その生活基盤の崩壊に遭遇しました。突然すぎて訳がわからないうえに、「高次脳機能障害」という自分の状況が認識できなくなるという障害も重なり、さらなる混乱と不安を招きます。そしてこの混乱と不安は僕の場合、「休職時よりも社会復帰した後」に強く顕在化しました。
もちろん個人の受傷状況や生活背景によって異なりますが、グループカウンセリングや患者会でお会いする比較的軽度の高次脳機能障害の方は、同じところで苦戦している感じがします。

復職において最初の数ヶ月間は、みんな「良く生きて戻ってきた」とねぎらいの声をかけてくれますが、その後は「そろそろもっと働いたら?」に変わります。見た目普通だからいくら説明しても理解はされないし、わかっていたとしても「頼むからもうちょっと本気出してくれよ」と言われます。
非常に辛いですね。。。

そう思ってただでさえ自発性の落ちている中、やる気500%ぐらい振り絞って元の業務に近いことをやろうとすると、「あれあれ、なんか上手くできない」という状況になったりします。さらにその過程で「今までの自分と違うこと」に本格的に気付き始めると、追い打ちをかけるように大きな精神的負担が併発します。
自身、受傷したことはもちろん認識していたのですが、これがこんなに就労面で影響を及ぼすものであるとは思っていませんでした。社会復帰してから気付く障害やそこから派生する精神的負担のほうが大きく、軽いフラッシュバックを発症して、会社に朝行けずそのまま病院に行ってしまったことも何回か体験。
一時期「会社=障害に気付く場所」になってしまい、それがさらなる就労意欲の低下や不安の発症に。
そして5年後や10年後の自分や家族の姿がイメージできなくなり、自分がどこを向いて走っていいのかわからない状況に陥りました。


見えない不安と自己実現のビジョン

この社会復帰に伴う「見えない不安」はどうしたらいいのか?
「見えない不安」は、これから先の社会復帰のステップや、自己実現のビジョン(自分はこうなりたいとか自分の夢など)が、自分で認識できなくなるとことに起因すると捉えてます。
なぜなら、自分を正しく認識することが難しくなる脳自身の障害だから。

では、新しいビジョンはすぐに持てるか?
人生、何十年も過ごして培ってきたビジョンがある日突然崩壊し、すぐに障害を受け入れて新しい自分のビジョンを想像するなんてとても難しいと思います。
その上、自分でも見えづらい高次脳機能障害において、それを行うのはさらに難しいこととなります。

ここに、高次脳機能障害者の復職の難しさや時間がかかると言われている所以があります。



新しい自分を共に創る

そのため当事者だけでなく社会復帰に関与する周囲の方々も含め、
段階的に「新しい自分のビジョン」を創っていくことを「共有」しながら「共創」していく
ことが高次脳機能障害と付き合っていく上で、最も重要なことであると僕個人として感じてます。

具体的には、社会復帰の過程を以下の3つのステップに分けて考えるようになりました。
1.過去の自分の確認
2.今の自分の確認
3.新しい自分を創る

当然、受傷程度により異なるしオーバーラップする部分もあると思いますが、おおよそ数年単位で各ステップを経ている感じがしてます。
高次脳機能障害の社会復帰の過程において、自分が今いったいどんな状況に置かれて、何ができる人間で、この先どうしたらいいのか、がわからなくなります。
その部分で僕自身混乱に陥ってフラッシュバックやパニックを起こしているのですが、自分の中で復帰の指標を持ち、今自分はこの段階なんだなとか、次はこのステップに踏み込もうという指標があると、闇の中でもがいている感じが薄まります。
そこを事前に当事者のみならず、家族・支援者・職場の方で事前に共有しておき、常にどこを歩いているのかをお互い状況確認することで見えない不安から解放され、スムーズな社会復帰につながると感じてます。

この考えを自分で持つようになるまで、自身トライ&エラーを繰り返しながら3年以上かかりました。
今思うと、復職最初の数年は武器や戦い方を持たずに戦場に入り込んでいった感じがしてます。
もちろん時には体当たりで自分を確認する必要もあるのですが、脳障害は記憶や経験や自尊心が削がれる障害でもあり、そこのバランスを保ちながら社会復帰を目指すことが重要となります。また段階的な「復帰の道しるべ」があることによって、当事者としても自信を持って「ゆっくり新しい自分を創っていこう」という気持ちが芽生え、心の落ち着きにもつながります。

「見えない不安」は「見える不安」にして共有を。

「見えない未来」は「見える未来」のために共創を。

混乱している頭の中を、周囲の力も借りながら、少しずつ整理し、自分を再確認して、受け入れて、一歩ずつ新しい自分創りに歩んでいきたい。一人で挑むには、あまりにも長いし、あまりにも困難すぎる道のりなので、長い視点で周囲のサポートが必要なのです。
と同時に、やるのはあくまでも自分自身であることも決して忘れないようにしてます。

乗り越えるのは、あくまでも自分自身です。

※上記内容の関連講演記事のURLです。
http://asayume001.blog.so-net.ne.jp/2012-03-25-1

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