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新しい自分創りを共創する [高次脳_社会復帰の戦略]

生活基盤の崩壊と自己認識の欠損が引き起こす、混乱と不安

あたりまえだった日常を支える、普段あまり気付かない「健康」という人間一番の生活基盤。
ある日突然、その生活基盤の崩壊に遭遇しました。突然すぎて訳がわからないうえに、「高次脳機能障害」という自分の状況が認識できなくなるという障害も重なり、さらなる混乱と不安を招きます。そしてこの混乱と不安は僕の場合、「休職時よりも社会復帰した後」に強く顕在化しました。
もちろん個人の受傷状況や生活背景によって異なりますが、グループカウンセリングや患者会でお会いする比較的軽度の高次脳機能障害の方は、同じところで苦戦している感じがします。

復職において最初の数ヶ月間は、みんな「良く生きて戻ってきた」とねぎらいの声をかけてくれますが、その後は「そろそろもっと働いたら?」に変わります。見た目普通だからいくら説明しても理解はされないし、わかっていたとしても「頼むからもうちょっと本気出してくれよ」と言われます。
非常に辛いですね。。。

そう思ってただでさえ自発性の落ちている中、やる気500%ぐらい振り絞って元の業務に近いことをやろうとすると、「あれあれ、なんか上手くできない」という状況になったりします。さらにその過程で「今までの自分と違うこと」に本格的に気付き始めると、追い打ちをかけるように大きな精神的負担が併発します。
自身、受傷したことはもちろん認識していたのですが、これがこんなに就労面で影響を及ぼすものであるとは思っていませんでした。社会復帰してから気付く障害やそこから派生する精神的負担のほうが大きく、軽いフラッシュバックを発症して、会社に朝行けずそのまま病院に行ってしまったことも何回か体験。
一時期「会社=障害に気付く場所」になってしまい、それがさらなる就労意欲の低下や不安の発症に。
そして5年後や10年後の自分や家族の姿がイメージできなくなり、自分がどこを向いて走っていいのかわからない状況に陥りました。


見えない不安と自己実現のビジョン

この社会復帰に伴う「見えない不安」はどうしたらいいのか?
「見えない不安」は、これから先の社会復帰のステップや、自己実現のビジョン(自分はこうなりたいとか自分の夢など)が、自分で認識できなくなるとことに起因すると捉えてます。
なぜなら、自分を正しく認識することが難しくなる脳自身の障害だから。

では、新しいビジョンはすぐに持てるか?
人生、何十年も過ごして培ってきたビジョンがある日突然崩壊し、すぐに障害を受け入れて新しい自分のビジョンを想像するなんてとても難しいと思います。
その上、自分でも見えづらい高次脳機能障害において、それを行うのはさらに難しいこととなります。

ここに、高次脳機能障害者の復職の難しさや時間がかかると言われている所以があります。



新しい自分を共に創る

そのため当事者だけでなく社会復帰に関与する周囲の方々も含め、
段階的に「新しい自分のビジョン」を創っていくことを「共有」しながら「共創」していく
ことが高次脳機能障害と付き合っていく上で、最も重要なことであると僕個人として感じてます。

具体的には、社会復帰の過程を以下の3つのステップに分けて考えるようになりました。
1.過去の自分の確認
2.今の自分の確認
3.新しい自分を創る

当然、受傷程度により異なるしオーバーラップする部分もあると思いますが、おおよそ数年単位で各ステップを経ている感じがしてます。
高次脳機能障害の社会復帰の過程において、自分が今いったいどんな状況に置かれて、何ができる人間で、この先どうしたらいいのか、がわからなくなります。
その部分で僕自身混乱に陥ってフラッシュバックやパニックを起こしているのですが、自分の中で復帰の指標を持ち、今自分はこの段階なんだなとか、次はこのステップに踏み込もうという指標があると、闇の中でもがいている感じが薄まります。
そこを事前に当事者のみならず、家族・支援者・職場の方で事前に共有しておき、常にどこを歩いているのかをお互い状況確認することで見えない不安から解放され、スムーズな社会復帰につながると感じてます。

この考えを自分で持つようになるまで、自身トライ&エラーを繰り返しながら3年以上かかりました。
今思うと、復職最初の数年は武器や戦い方を持たずに戦場に入り込んでいった感じがしてます。
もちろん時には体当たりで自分を確認する必要もあるのですが、脳障害は記憶や経験や自尊心が削がれる障害でもあり、そこのバランスを保ちながら社会復帰を目指すことが重要となります。また段階的な「復帰の道しるべ」があることによって、当事者としても自信を持って「ゆっくり新しい自分を創っていこう」という気持ちが芽生え、心の落ち着きにもつながります。

「見えない不安」は「見える不安」にして共有を。

「見えない未来」は「見える未来」のために共創を。

混乱している頭の中を、周囲の力も借りながら、少しずつ整理し、自分を再確認して、受け入れて、一歩ずつ新しい自分創りに歩んでいきたい。一人で挑むには、あまりにも長いし、あまりにも困難すぎる道のりなので、長い視点で周囲のサポートが必要なのです。
と同時に、やるのはあくまでも自分自身であることも決して忘れないようにしてます。

乗り越えるのは、あくまでも自分自身です。

※上記内容の関連講演記事のURLです。
http://asayume001.blog.so-net.ne.jp/2012-03-25-1

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当事者が考える社会復帰の戦略 [高次脳_社会復帰の戦略]

高次脳機能障害者本人の経験レポートや対処法についての情報は見かけるようになりましたが、当事者本人が社会復帰の「戦略」について言及しているものはあまり多くはないと感じてます。当然ながら、脳障害の場合、当事者側から戦略構築や情報発信をすることが難しくなるため、医療従事者や介護・支援者からのレポートやソリューション情報が主なものになります。

他の障害に比して「高次脳機能障害は難しい・わかりづらい」と言われてるのはここに起因してると捉えてます。

幸いにも自身の受傷程度が重くはなかったこと、個人のキャリアとして物事を系統立てて考える思考があったこと、医学のナレッジが基盤としてあったこと、病院での講演や専門誌への執筆など、受傷3.5年経って、やっと自分に起きたことが何だったのかを振り返り整理することが何となくできるようになりました。

それを踏まえ、あくまでも個人的な実体験ベースから得られた「社会復帰の戦略」として、今後すこしずつ掲載していく予定です。

高次脳機能障害者は、すでに50万人近くいるのではと言われてます。全ての方々において病状や受傷程度や背景や歴史が異なるため、参考になるかはわかりませんが、あくまでも僕、個人の経験から得たことを種として述べている一参考情報として見ていただければと思います。
と同時に、知見や経験や思考は共有すべきものであるとも捉えてます。
それによって、少しでも多くの方々の社会復帰につながれば、僕自身、嬉しいかぎりです。
知恵を共有して、障害を得てもあたり前の未来を。
脳障害だからって口を閉ざしている必要はないと思います。
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